ロイター通信は3日、事情に詳しい関係者の話として、中国ネット通販大手のJDドットコム(
09618)と、アリババ集団(
09988)傘下の金融会社アント・グループが中国人民銀行(中央銀行)に対し、人民元を裏付け資産とする暗号資産(仮想通貨)「ステーブルコイン」の発行を承認するよう働きかけていると伝えた。両社がオフショア人民元に価値が連動するステーブルコインを香港で発行すれば、暗号通貨の分野で影響力を拡大する米ドルへの対抗措置になると説明しているという。
ステーブルコインは法定通貨や国債などに価値を連動させることで価格変動を抑えるよう設計された暗号資産を指す。香港では「ステーブルコイン条例」が8月1日に施行される。同条例は裏付け資産とする通貨が原則自由に選べる。既存ステーブルコインの多くが米ドルや米国債を裏付け資産とするなか、人民元建てステーブルコインが発行されれば中国政府が進める人民元の国際化を後押しするとみられている。
JDドットコムとアントは同条例の成立を受け、香港ドルを裏付け資産とするステーブルコインの発行計画を進めている。ただ消息筋によれば、両社は人民銀との非公開会合で、人民元の国際化に向けて必須のツールとなるオフショア人民元ステーブルコインの導入が急務だと主張したという。
ロイター通信は、中国政府が2021年に暗号資産を禁止していると指摘。仮にJDドットコムとアントのロビー活動が成功すれば、中国の暗号資産政策が大きく転換し、人民元国際化の戦略が見直されることになるとした。