中国国際金融(CICC)は香港株式市場と中国本土の上海・深セン株式市場の相互取引制度を分析したリポートで、中国本土の投資家が香港株を売買する南向き資金の流入が4月中旬から鈍化し、足元では純流出に転じていると指摘した。5月12−16日の南向き資金は86億9000万HKドルの流出となり、前の週の72億7000万HKドルの流入から一転して売り越しとなった。これは2024年2月初旬以来、週間ベースで最大の売り越し額であり、1日平均では17億4000万HKドルの流出となる。5月に入ってからは累計14億2000万HKドルが流出している。『AAストックス』が19日伝えた。
特に、5月12日の売り越し額は185億3000万HKドル近くに達し、21年2月以来最大の1日当たり流出額だった。個別銘柄では中国建設銀行(
00939)、中国銀行(
03988)、招商銀行(
03968)などが買い越しだったものの、テンセント(
00700)、小米集団(
01810)、SMIC(
00981)などの売り越しが目立った。
CICCは南向き資金が流出に転じた要因として、◇市場センチメントの持ち直しが一服し、一部の投資家が利益確定の売りに動いた、◇それ以前の流入が過熱気味で、特に「南向きによる価格決定権」が過度に強調されていた、◇香港株の公募増資や新規株式公開(IPO)が増えた影響で、投資家が様子見姿勢を強めた――の3点を挙げた。
CICCはこうした変化が以前に示した分析とも一致していると強調した。以前のレポートでCICCは、3月以降に南向き資金が香港株市場における資金面の主力となっており、その中心は個人による取引資金やパッシブ資金だと指摘。一方、公募ファンドや保険会社といった機関投資家による資金は、想定されていたほど潤沢ではない可能性があるとの見方を示していた。
CICCの試算では、年内に追加で流入する南向き資金は約2000億−3000億HKドルに上る見込み。年間累計では8000億−1兆HKドルが流入する計算となる。