翌年の経済政策基調を策定する重要会議、中央経済工作会議を12月に控え、市場では政策テーマ株が注目されている。中国政府は11月以来、ゼロコロナ政策の調整や不動産市場の支援策など、安定成長維持に向けた施策を相次いで打ち出しており、今回の同会議でも前回と同様、「安定成長」が政策基調になるとの見方が強い。1年前の同会議で、主要な政策課題とされたのは、柔軟な金融政策や、製造業の競争力強化、不動産市場の「良性循環」の促進のほか、二酸化炭素(CO2)排出削減とカーボンニュートラルの実現に向けた国内需要の高質な発展。セクター別では、引き続き脱炭素を中心とする環境銘柄がテーマ株の一つとなりそうだ。
中国政府は「30年のCO2排出ピークアウト」と「60年のカーボンニュートラル」を目指すという、いわゆる「3060ダブルカーボン」目標を掲げる。21年9月と22年8月に発生した深刻な電力不足から、主力の石炭火力発電に回帰する動きも見られたが、習近平国家主席が世界に宣言した「3060ダブルカーボン」の達成に向けた低炭素・脱炭素政策は今後も、長期的に続く見通しだ。
この方面の政策動向を見ると、最近では国家エネルギー局が11月初めに、3月の全国人民代表大会の第7080号議案に対する回答文を公開。その中で、グリーン金融政策システムの構築や与信構造の最適化に加え、風力発電・太陽光発電など再生可能エネルギー分野へのさらなる金融資源の投下を進める方針を明らかにした。十分な電力の確保に向け、クリーン化を目指しながら主力の石炭火力発電の稼働を続ける方針を示すと同時に、新エネルギーの大規模な発展の必要性にも言及する形となった。
◆中国光大環境、低PERと高配当利回りが魅力
香港上場の環境関連銘柄はこれまでの調整を受け、全般に値ごろ感が強い。興業証券によれば、環境関連銘柄の予想PERは現在、平均6倍弱と、7年ぶりの低水準。相対的に低PER、高配当利回りの魅力が高まっているという。同証券は個別では、中国光大環境(
00257)に目を向けている。
中国光大環境は幅広く環境ビジネスを手掛ける総合環境サービスプロバイダー。主に地方政府からごみ処理発電や汚水処理サービスを請け負う形で、施設の建設および運営を手掛ける。コロナ対策を受けたプロジェクトの進捗の遅れで、22年6月中間期には建設サービス収入が急減。全体で前年同期比19%減収、28%の減益となり、過去13年続いた上期の最高益更新記録が途絶えた。ただ、各地が環境対策を継続する中で、ビジネスの拡大余地は依然大きい。華泰証券はうち、ごみ処理発電の国内市場規模について、今5カ年計画(2021−25年)中に年率平均12.8%の拡大を見込む。20年の321億元から、25年には587億元に膨らむとの見方だ。
中国光大環境の現在株価の22年、23年予想PERは約3倍と、同業の中国海螺環保(
00587)の7.7倍、5.3倍を下回る水準。半面、23年の予想配当利回りは10%超と、同業銘柄の中では突出した水準にあり、『香港経済日報』はまずは3.8HKドルへの上昇を予想している。
◆大唐新能源、再エネ発電量が高い伸び
このほか、風力発電銘柄では、発電量の伸び率が相対的に高い大唐新能源(
01798)が注目銘柄の一つ。10月の発電量は前年同月比25.6%増と、同業の新天緑色能源(
00956)と龍源電力(
00916)の約21%増を上回った(1−10月では7.1%増)。
同社は5大電力グループの一つ、大唐集団傘下のクリーンエネルギープラットフォームであり、中央企業をバックに持つことが強み。事業や資金の獲得において有利な立ち位置にある。22年には新たに2GWの新規設備を導入する計画で、その大部分が10−12月に稼働を開始する運びという。ブルームバーグの市場コンセンサス予想では、22年通期の純利益は前年比22%増の18億3000万元。2022−24年に年率平均15.1%の利益成長見通しが示されている。
一方、太陽電池原材料の多結晶シリコンとウエハーの世界大手、協キン科技(
03800)も焦点の一つ。同社の業績は21年に転換点を迎え、20年までの3期連続赤字から51億元の黒字に転じたが、22年にはロシアのウクライナ侵攻に起因する多結晶シリコン価格の急騰で、前年比200%の増益を達成する見通し。23年、24年に関しては前年比の減益が見込まれるものの、143億元、94億元の黒字を維持するというのが市場の予想だ。なお、中国の太陽光発電の新規容量は1−9月に52.6GWと、ほぼ前年通年の54.9GWに迫るに数字。22年3月以降にコロナ感染が再燃したにもかかわらず、新規の設備導入は加速傾向を示している。