中国の人型ロボット開発セクターは世界的に注目の的となっており、8月19−23日に北京で開かれた「世界ロボット大会」の様子は日本でも多くのメディアが取り上げた。また、時をほぼ同じくして、この分野で先頭グループを走る宇樹科技(688836)が上海証券取引所の「科創板」に上場。初値が公開価格比629%高を記録し、時価総額が4449億元(約10兆5620億円)に達したことなども話題となった。
世界の人型ロボット市場においては現状、中国勢の存在感が圧倒的だ。米リサーチ会社Smart Analytics Global(SAG)によると、26年上期の世界出荷台数は約1万9100台と、前年同期の5100台から3倍強の急増を記録。中国メーカーがうち97%超のシェアを掌握したという。中国工業情報化省は7月、国内の人型ロボット製品が上期に400機種を超えたとの数字を明らかにしている。
◆中国の販売台数、26年に5万台を予想=モルガン・スタンレー
中国の人型ロボット業界の発展においては、米国による中国製新型ロボット(人型や四足歩行)の輸入禁止措置が逆風。ただ、それでも技術開発や量産化は今後も急ピッチで進む見通しだ。モルガン・スタンレーはこのほど、26年の中国の人型ロボット販売台数予測を5万台に上方修正。「中国の完全かつ成熟した人型ロボット産業チェーンは、他地域には容易に追随できない」とし、この分野での中国優位が続く見通しを示した。もともとスマートフォンやEVの生産大国であることが中国の強み。また、中国人消費者の人型ロボットへの投資意欲は他国を明らかに上回るとしている。
一方、宇樹科技の創業者である王興興会長は、「人型ロボットの大々的な普及に向けては、実際のタスク遂行効率や汎化能力(未知の新しいデータに対しても正しく予測や分類ができる能力)に依然、向上の余地がある」との見解。早ければ2−3年以内に身体知能が実質的なブレークスルーを迎える見通しを示している。これが実現すれば、本格的に次のフェーズに突入しそうだ。
◆“2強”の一角、智元創新が香港上場を準備
世界人型ロボット市場をベンダー別に見ると、宇樹科技と智元創新(AGIBOT)が“2強”状態にあり、2社合計で約8割のシェアを握る。前出のSAGの集計では、26年上期には智元創新の出荷台数が宇樹科技を上回り、初の首位を獲得した(世界シェア44%)。一方、トレンドフォースは26年通年の生産台数見通しの中で、宇樹科技が世界シェア49%を掌握し、首位に立つとの予測を示している。
うち宇樹科技は8月19日に上海「科創板」にデビューし、人型ロボット銘柄の上場第1号となったが、続いて競合の智元創新が香港メインボードに上場をする計画だ。7月後半の報道により、すでに上場手続きを開始したとの情報が明らかになった。『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』によれば、中信証券(
06030/
600030)が主幹事、モルガン・スタンレーと中国国際金融(
03908/
601995)が共同幹事を務めるという。
智元創新は創業わずか3年程度(23年2月創業)でありながら、研究開発、量産化、実際の利用シーンへの導入を急ピッチで実現してきた有力スタートアップ。車輪型、半人型、人型、および四足歩行ロボットを網羅するフルラインアップを有し、6月には1万5000台目のロボットをラインオフした。ケ泰華・創業者兼CEOは米誌『タイム』が「TIME100 AI 2026」(世界のAI分野で最も影響力のある100人)に選出した人物。同社の香港でのIPOは宇樹科技に続く大注目の案件となりそうだ。
◆小鵬集団や小米集団などEVメーカー、人型ロボット開発進む
なお、香港上場企業に目を向けると、“2強”の宇樹科技と智元創新を追う立場にあるのが深セン市優必選科技(
09880)。ほかに、小鵬集団(
09868)、広州汽車集団(
02238)、BYD(
01211/
002594)、小米集団(
01810)など、複数の有力EVメーカーが人型ロボットの開発を進めている。
最近のメディア報道を見ると、小鵬集団は26年末までに、ハイエンド汎用人型ロボット「IRON」の量産体制を整え、27年に正式に発売する計画。27年中に、需要に応じて月産能力を数千台まで拡大できるという。また、小米集団は現在試作段階にある次世代人型ロボット「鉄大」を中国国内で先行して展示した後、欧州での展開に持ち込む計画を明らかにしている。「鉄大」は身長約1.7メートル、体重66キログラム。手を中心に、全身に66の自由度(DoF)を備えるという。