中国の首都北京では5日、国会に当たる全国人民代表大会(全人代)が開幕し、李強首相は冒頭の政府活動報告で、26年のGDP成長率目標を「前年比4.5−5%」に設定したことを明らかにした。2023−25年に「5%前後」だった目標を4年ぶりに引き下げた格好。第15次5カ年計画(2026−30年)の出足の勢いを維持するために、「5%前後」を維持するとの予想もあったが、過剰生産やデフレスパイラル懸念が続く中、より現実的な数字を選択し、政策余地を残す形となった。
中国のGDP成長率は、第14次5カ年計画期間(2021−25年)に年平均5.4%を達成したが、「35年までに、1人当たりGDPを20年比で倍増させる」との長期目標を達成するためには、今後10年間で年平均4.17%の成長を確保する必要がある。26年のGDP成長目標はある程度余裕をもって、これを上回る水準。政府活動報告の起草責任者である国務院研究室の沈丹陽主任は、「国内経済の運営状況と外部環境の変化を総合的に勘案した上で、目標レンジを設定した」と説明している。ちなみに、ブルームバーグが集計した市場コンセンサス予想では、中国の26年の予想成長率は現時点で前年比4.6%と、26年の政府目標の下限に近い水準にある。
◆「より積極財政」で財政赤字率は約4%に維持
李強首相は今回の政府活動報告で、国内の深刻な需給不均衡や市場の期待値の弱さに加え、不動産不況の長期化、地方政府の過剰債務リスクが続いていることを認め、さらに外部環境の厳しさを強調した。ただ、「長期的に良好な経済発展を支える条件と基本的な趨勢は変わっておらず、制度的な優位性と大国としての強みは絶えず発揮されている」との見解を表明。中国経済の長期的な成長トレンドは変わらないとの認識を示している。
政府指導部は25年12月に開かれた中央経済工作会議で、「より積極的な財政政策」「適度な金融緩和策」という26年の経済運営方針を固めたが、今回の報告はこの方針通りの内容。財政面の目標を見ると、対GDP比の財政赤字は前年と同じ約4%で、金額ベースでは前年比2300億元増の約5兆8900億元。一般公共予算は前年から約1兆2700億元積み増し、初めて30兆元に到達するとした。
また、超長期特別国債発行額は前年目標並みの1兆3000億元で、これを「両重」(国家重要戦略の実施と重点分野の安全保障能力の構築)と「両新」(大規模な設備更新と消費財の買い替え促進)に振り向ける計画。地方政府のインフラ建設向け特別国債(専項債)は4兆4000億元で、これも前年並みとなる。
一方の金融政策に関しては、「適度に緩和的」との方針通り、政府は今後、預金準備率引下げや利下げを含む多様な政策ツールを柔軟かつ効率的に運用していく意向という。
このほか、政府活動報告の中に示された26年の数値目標は、◇消費者物価指数(CPI)上昇率2%前後、◇都市部調査失業率5.5%前後、◇都市部新規雇用1200万人以上――で、いずれも前年の目標と同じ。単位GDP当たりの二酸化炭素(CO2)排出量の削減目標は、「3.8%前後」で、これは25年目標の「3%前後」から引き上げられたことになる。
◆スマート経済、「補完」から「基盤」にシフトで中国経済の支柱に
一方、政府活動報告において示された経済政策方針のキーワードは引き続き、「内需拡大」と「自立自強」。うち内需拡大に関しては、「強大な国内市場の構築に尽力する」との方針を再確認し、「都市・農村住民の所得増計画を策定・実施し、賃金・社会保障制度の改善などの面で、一連の実務的な措置を打ち出し、消費税率と課税範囲に関しては調整・最適化する。超長期特別国債による調達資金のうち2500億元を消費財の買い替え補助金に充てる」などの具体的な施策を提示している。
もう一つの重点課題となる「自立自強」は、外国に依存しない自前のサプライチェーンを構築するため、AIや半導体など各種ハイテク分野の発展を目指す戦略。政府活動報告によれば、「産業革新プロジェクトを実施し、中央国有企業に対して応用シナリオの開放を奨励し、半導体、航空宇宙、バイオ医薬、低空経済などの新興基幹産業を育成する」。さらに未来エネルギーや量子技術、フィジカルAI、ブレインマシンインターフェース(BMI)、6Gなどの未来型産業を育成し、各方面においてAIとの融合を目指す「AI+」の深化・拡大を推進。次世代スマート端末とAIエージェントの普及促進を図るなどの目標が盛り込まれた。
また、本格的な「スマート経済」化を目指す方針も明らかになったが、これは従来の「デジタル経済」化のアップグレード版。サポートツールとしてではなく、経済社会の基盤としてのスマートシステムの全面的な構築を推進し、「補完」的な役割だったスマート経済へのGDPへの貢献を、「支柱」レベルに引き上げるとの目標が明らかになっている。