中国では先進運転支援システム(ADAS)が進化を遂げ、条件付き自動運転を意味するレベル3が、「技術検証」段階から本格的な「商業化」段階に移行しつつある。米国自動車技術会(SAE)が定める自動運転レベルは0から5まで6段階だが、うちレベル3(L3)とは「システムが全ての運転操作を実行するが、システムが要求した際にドライバーが介入する必要がある」との定義。順調に進めば、中国は26年に、「自動運転元年」を迎えることになる。
自動運転の量産化への期待が高まったのは、工業情報化部が15日、初めてL3のEV2車種の量産化を承認したことが背景。条件付きながらも公道での試験走行を認めた。自動運転技術の開発を奨励してきた政府としては、ADAS搭載車両の量産化を後押しすることで、中国ブランドの競争力を引き上げる狙いだ。
この2車種はいずれもEVセダンで、重慶長安汽車(
000625/
200625)傘下の「深藍SL03」と、北京汽車集団系の北汽藍谷新能源科技(
600733)が生産する「極狐アルファS」。それぞれ重慶市と北京市の指定地域内で、制限速度時速50キロ、80キロの条件付き自動運転が可能になるという。また、小米集団(
01810)傘下の小米汽車もL3の試験ライセンスを取得済み。これで道路試験を継続的に実施できるようになった。
国泰海通証券はL3の量産化への流れは、レベル2(部分自動化)とレベル4(高度自動化)との境界線を突破したことを意味すると指摘。L3の大規模商用化が実現すれば、全面的なレベル4時代が遠からず到来するとの見通しを示している。
また、ADAS市場はこの先、技術レベルの向上に伴い世界規模で急拡大する見込み。灼識諮詢の予測では、世界の自動運転市場の規模は、25年の392億米ドルから35年には8兆2902億米ドへ、年率平均71%の成長を遂げる見通しという。
◆自動車メーカーよりサプライヤーが有利
L3の商用化に向け、今後は関連サプライチェーンの需要が急拡大する見込み。『香港経済日報』は自動運転市場への直接の参加者となるNEVなどの自動車メーカーより、部品やソフトなどのサプライヤーの方が有利な立ち位置にあるとの見方だ。事業の先行き見通しがより明確なことがその理由。今のところサプライヤー企業の多くは売上高が急成長しつつも、黒字化やその後の急速な利益成長段階には至っていないが、特に半導体関連やLiDAR、制御システム関連企業は受注見通しが明確であり、量産化も確実。投資家にとっても魅力的な選択肢になるという。
同紙によると、L3の核心はシステムエンジニアリング性にあり、◇知覚◇意思決定◇制御シャーシ(ステアリングやブレーキ)◇ソフトウエアとアルゴリズム――など、多くの要素を必要とする。このうち、車両の「目」や「耳」として機能する知覚レイヤーはマルチセンサーの融合や意思決定アルゴリズムなどの機能に依存し、環境認識において用いられるのはLiDARやカメラ。香港上場企業では、地平線機器人(
09660)や黒芝麻智能国際(
02533)がこの分野のテーマ株となる。
また、運転時の判断を行う意思決定レイヤーを機能させるには、高演算能力の車載グレードチップとドメインコントローラーを用いた大規模モデルアルゴリズムの統合が必要。速騰聚創科技(
02498)、小馬智行(
02525)、舜宇光学科技(
02382)がこの分野のサプライヤーとなる。ほかに、制御シャーシのテーマ株はネクスティア(
01316)、浙江世宝(
01057)。ソフトウエアとアルゴリズムは深セン佑駕創新科技(
02431)になるという。
◆チップとLiDARの最大手、地平線機器人と速騰聚創科技に注目
このうち優先的な投資選択肢となり得るのは、国産の自動車運転用チップの最有力企業である地平線機器人。中国メーカー向けの基礎的運転支援ソリューションおよび総合運転支援ソリューション市場で、それぞれ45.8%、32.4%のシェアを握る。同社のHSD(全シーン都市部運転支援ソリューション:Horizon SuperDrive)システムはすでに複数車種で量産化されているが、今後は高演算能力需要の急増に伴い、爆発的な収益成長を遂げる見込み。ブルームバーグ集計の市場コンセンサス予想では、まずは27年の黒字化見通し(調整後EPSベース)が示されている。
一方のLiDAR・センサー分野で有望視されるのは速騰聚創科技。中国国内で搭載台数トップのLiDAR大手であり、24年の車載用LiDAR市場におけるシェアは33.5%と首位(蓋世汽車研究院調べ)。同社はさらに自社開発チップを通じ、L3・L4向けに投入した次世代型高性能・高解像度デジタルLiDAR製品シリーズ「EM4」は、すでに自動車メーカー13社の計56車種について受注を確定済み。市場コンセンサス予想では、同社は26年に黒字化する見込み。27年には前年比288%増の大幅増益を達成する見通しが示されている。