
中国の「低空経済」産業はすでに構想段階から「ビジネス化」の段階にシフトしつつあり、26年には本格的な商用化が始まる見通しだ。中国政府の支援の下、「低空経済」関連ビジネスは実際、加速度的に進展しており、ここに来て企業による自社開発製品の発表が相次いだ。この先、“黄金期”を迎えるとの期待が高まる中、主要企業の投資価値も顕在化し始めている。
個別企業に目を向けると、人型ロボットなどと同様、この分野でもEVメーカーの台頭が目立つ。『香港経済日報』は吉利汽車(
00175)、小鵬汽車(
09868)、シーラス・エアクラフト(
02507)を有望視しているが、うち吉利汽車は新エネルギー車で最大手BYD(
01211/
002594)に続く有力メーカー。小鵬汽車は新興EVメーカーの1社でありながら人型ロボットでも先行するハイテク企業。もう1社のシーラス・エアクラフトは米本社のプライベート航空機メーカーとなっている。
◆中央・地方政府の全面支援で「低空モビリティ革命」幕開け
低空経済とは、「低高度空域での有人・無人航空機による飛行活動とその関連分野を総合的に発展させた経済形態」。ドローンを活用した物流や測量・探査、農業、科学研究・教育、医療救援活動など様々だが、現時点で最大の焦点となっているのは「空飛ぶクルマ」こと、eVTOL(電動垂直離着陸機)の開発だ。ほかに汎用型の小型航空機による1000メートル以下の低空域での飛行活動も、この分野に含まれる。
23年12月の中央経済工作会議で戦略的新興産業の一つに位置づけられた後、24年の政府活動報告に初めて「低空経済」が登場。25年の全国人民代表大会において、安全かつ健全な発展を推進する政策方針が明確化された。25年下期には、中国民用航空局が作業指導グループを創設しており、今後は産業政策が相次ぎ発表される見込み。政府当局においても、計画から行動へ、フェーズが移行したことをうかがわせている。
また、地方政府も低空ビジネスの発展を強く支援する立場。この9月だけでも、広東省江門市や深セン市、安徽省合肥市、北京市などが続々、発展支援措置を明らかにした。
政府の全面支援の下、中国の「低空モビリティ革命」はすでに幕を開け、主要各社が自社開発製品の商用化に向けて歩を進める。最近では吉利汽車(
00175)の持ち株会社、吉利控股集団傘下の沃飛長空科技(AEROFUGIA)が大型eVTOL「AE200-100」の初号機を四川省成都の工場で正式にラインオフした。続いて有人飛行試験を行い、26年には商業生産を開始する計画だ。
また、小鵬汽車傘下の広東匯天航空航天科技(AeroHT)もeVTOLプロジェクトを積極的に推進しており、10月中にはドバイで陸空両用の空飛ぶクルマ「陸地航母(Land Aircraft Carrier)」の初飛行を予定。26年後半に正式に納車を始める予定を明らかにしている。9月上旬の発表によれば、「陸地航母」の中国国内での予約注文は約5000件に達したという。このほか、億航智能(イーハン・ホールディングス:EH)、吉利系の浙江時空道宇科技なども26年に無人機とeVTOL製品の生産開始計画を明らかにしている。
◆低空産業は「新エネ車産業と類似」、30年頃に“爆発期”到来か
現時点では、低空経済はまだ発展初期段階にあるが、チャイナ・テレコム(
00728)傘下のシンクタンク、天翼智庫は、「30年をめどに“爆発期”に入る」との見方だ。発展プロセスは新エネルギー車に類似していると指摘し、技術開発期(約8年)、導入期(約12年)、急発展期(約10年)を経て、最終的に長期の成熟期を迎えると予想。今は「導入期半ばの段階」にあるとしている。
一方、民用航空局の推計によれば、中国本土における低空経済の市場規模は25年に1兆5000億元、30年には2兆3000億元、35年には3兆5000億元に拡大し、この10年間に年率平均8.8%の成長を遂げる見通しという。
『香港経済日報』は個別では、シーラス・エアクラフトを選好しているが、同社は民間航空業界の先駆者であり、かつ世界市場のリーダー。香港市場で唯一のプライベート航空機銘柄でもある。同社の「SR」シリーズは低空安全飛行能力や緊急システムの優位性が高く、プライベート、専門の両市場で低空経済拡大の恩恵を受ける見通しだ。このほか、eVTOLの商業化で先行しているのは、26年の商業化を計画している吉利グループと小鵬汽車。この先の商業化プロセスにおいて、改めて市場の注目を集める見通しだという。