中国で超低予算アニメ映画「牛来」が異例のヒットを記録している。『証券時報』など中国メディアによると、わずか2人の制作チームが手掛けた同作は、公開当初は興行収入が伸び悩んだものの、作品の完成度と宣伝用ポスターとのギャップがSNSで話題となり、観客が劇場に押し寄せる展開となった。
中国メディアによると、「牛来」は公開前に水墨画調の美しいポスターを公開。一方、実際の本編では粗い3Dモデルやぎこちない動き、簡素な背景などが目立ち、宣伝素材との落差がSNSで注目を集めたという。
8月14日には「興行収入が1万元にも満たない」といった投稿がSNSで拡散。『証券時報』によると、作品の完成度を面白がる投稿や切り抜き動画が相次ぎ、「どれほどひどいのか実際に見てみたい」と劇場を訪れる観客が増えたという。
現地メディアの報道によると、公開初日の興行収入は342元にとどまり、公開9日間の累計も7169元、観客動員数は236人だった。ところが、SNSでの話題拡散を受けて興行収入が急増。中国メディアによると、16日には1日で420万元を突破し、17日朝時点の累計興行収入は665万元に達した。制作側の収益も220万元を超えたと報じられている。猫眼娯楽(
01896)の映画興行データプラットフォーム「猫眼専業版」によると、17日午前の時点で興行収入ランキングで4位につけている。
観客の反応も通常の映画作品とは異なるという。中国メディアが紹介した観客の声では、SNS上の動画を見て「どんな作品なのか確かめるため」に劇場を訪れたケースが多く、上映中には観客から笑いが起きるなど、映画そのものだけでなく劇場での鑑賞体験も話題になっている。
一方、作品を巡っては批判も出ている。中国メディアによると、制作者の出身地である大連の一部映画館では、都市のイメージへの影響を理由に上映を取りやめる動きもみられるという。
中国メディアは「牛来」のヒットについて、映画の完成度や宣伝費だけでは説明できない興行現象として紹介している。人工知能(AI)技術の進歩などで映像制作のコストが低下するなか、SNSで話題を生む独自性や特定の観客層を取り込む力が興行を左右する可能性を示す事例との見方も出ている。
専門家からは、同作の制作手法そのものを成功モデルとみなすのは難しいとの指摘がある一方、映画市場が低迷するなか、低予算作品にも観客を呼び込める柔軟な上映・宣伝手法の必要性を示す事例との分析も出ている。