中国のスマホアプリ市場で、独居者の「万が一」への不安に応える安否確認アプリが急速に存在感を高めている。中国のAppストア有料アプリランキングで1位を獲得した「死了麼(死んだか)」だ。刺激的な名称とは裏腹に、大都市を中心に増える一人暮らしの若者の孤独死不安を的確に捉え、短期間で利用者と企業価値を膨らませている。
アプリの仕組みは極めて簡単だ。利用者は毎日アプリを開き、ワンタップでサインインする。2日連続で操作がなければ、翌日に事前登録した家族や友人へ異常を知らせるメールが自動送信される。会員登録やログインは不要で、位置情報など過剰な権限も求めない。現地メディアの報道によると、開発コストは1500元にも満たず、軽量設計が特徴となっている。
拡散の起点はSNSだった。インフルエンサーの紹介に加え、BBCなど海外メディアが相次いで報じたことで注目が一気に拡大した。開発会社の企業価値も急騰し、現地メディアによると、数日のうちに評価額は1億元近くまで膨らんだという。すでに60社以上の投資機関が接触し、数千万元規模の資金調達が進んでいるもようだ。
開発チームは13日、世界展開を視野にブランド名を「Demumu」に変更すると発表した。「De」は英語のDeathに由来し、「mumu」はポップマート(
09992)の人気キャラクターLabubuの親しみやすさを意識したという。すでに米国、英国、カナダなど40カ国以上で提供しており、米国は中国に次ぐ主要市場に育っている。
一方で、課題も浮き彫りになっている。利用者からは「2日後の通知では遅い」「メールだけでは気づきにくい」といった実用性への不満が出ている。技術的な参入障壁が低い点も弱みだ。生成AIを使い、数時間で類似機能のアプリを開発・公開する事例も現れている。
運営するムーンスケープ・テクノロジーズ社は、今後AIを活用した能動的な見守り機能の導入を計画する。スマホ内に「AI安全パートナー(AI安全伴侶)」を構築し、利用者の状態をより継続的に把握する構想だ。
話題性先行の一過性ブームとの見方もあるが、シンプルな発想が巨大市場を動かす象徴的な事例となっている。