中国当局は海外に登記された企業が中国本土外で上場する際の審査の対象を広げ、香港での新規株式公開（IPO）を含めるもようだ。消息筋によると、中国証券監督管理委員会（CSRC）はすでに、変動持ち株事業体（VIE）と呼ばれる仕組みを使った海外上場を目指す企業を専門に取り扱うチームを設置した。中国政府はVIEの乱用を問題視しているという。ロイター通信が10日伝えた。

　中国企業による本土外でのIPOを巡っては、市場ではVIE構造を持つ企業の香港上場は本土当局による審査対象に含まれないとの見方があった。しかしIPO審査の新ルール草案では、CSRCはVIE構造企業も除外していないという。中国企業の米国上場に中国政府が厳しい目を向けるなか、本土外での資金調達を目指す企業にとって香港が上場先として選ばれやすくなるとの期待があったが、本土当局による審査義務付けが冷や水を浴びせかねない。

　CSRCの動きは、数カ月前から鮮明となっていたアリババ集団（09988）などの民営企業の「無秩序な資本拡張」に対する締め付けの一環とみられる。CSRCや香港証券先物委員会（SFC）、香港証券取引所（00388）はコメントを控えている。

　VIEはメディアや通信など外資が厳しく規制されている業界の中国企業が、海外上場で資金を調達する手法として20年ほど前に考え出され、主にインターネットサービス企業などが採用している。中国で実際に事業を行う企業とは別に、ケイマン諸島や英領バージン諸島などの中国国外に企業を登記して海外で上場し、上場企業が「協議支配契約」を通じて中国の事業会社を実質的に支配する。現行ルールの下では、VIE構造を採用すれば、中国企業の米国や香港でのIPOは中国本土当局による正式な認可を必要としない。