上海ディズニーランドが16日に正式に開園する。米ウォルト・ディズニー・カンパニーが海外に建設したテーマパークとしては東京、パリ、香港に次ぐ4カ所目で、中国本土で初となる。ホテルなどを含めたリゾート全体の総工費は55億米ドル。経済ニュースサイト『網易財経』によると、業界関係者は上海ディズニーランドの直接的な経済効果だけで年間156億元、ほかに波及効果が144億元に上ると見込んでいる。景気を押し上げる効果だけでなく、中国の新たな消費の潮流を呼び起こす先導役として、中国株式市場での注目は高い。
上海株式市場でディズニーテーマ株とされている銘柄は3種に大別できる。商品売り上げ増が期待される小売業、来場者の足となる交通機関、上海ディズニーランドの中国側出資者の傘下上場会社だ。
◆上海政府系企業が出資、市場は傘下上場企業の成長に期待
『証券時報』によると、国金証券は小売業での関連銘柄として、上海百聯集団(
900923/
600827)、上海豫園旅游商城(
600655)、上海新世界(
600628)を挙げた。上海百聯集団は大手小売グループである百聯集団の中核企業であり、傘下にスーパーマーケットの聯華超市(
00980)を抱える。上海豫園旅游商城は上海市黄浦区の観光名所「豫園商城」が中核事業。上海新世界は百貨店を運営する。
交通機関で恩恵が大きいとされるのは、上海の空の玄関口である浦東国際空港を経営する上海国際機場(
600009)と、同空港をハブとする中国東方航空(
00670/
600115)だ。上海のタクシー運営大手、大衆交通(
600611)や、上海吉祥航空(
603885)、春秋航空(
601021)も追い風を受けるだろう。
こうした企業の収益増見通しは、上海ディズニーランドの高い集客力が前提だが、業界関係者の予測は2016年の入場者が500万人と強気だ。年度換算では1000万人に達することになり、東京ディズニーランド(2015年の入場者1660万人)には及ばないまでも、香港ディズニーランド(同680万人)を大きく上回る(入場者数の出所は米テーマエンターテインメント協会)。香港の経済紙『信報』は13日、広東省のある旅行会社では香港観光を予定していた顧客の3割が行き先を上海ディズニーランドに切り替えたと報じた。同省の観光客からすれば、香港と比べて宿泊費や食費が安く、ビザ取得が不要な上海はより魅力的に映る。対照的に、新味に欠け、香港への観光客の減少に悩まされる香港ディズニーランドの経営環境がますます厳しくなりそうだ。
上海ディズニーランドは米ウォルト・ディズニーと、中国側出資者である上海申迪集団の合弁事業だ。上海申迪集団の現在の株主は、上海陸家嘴(集団)有限公司、上海文化広播影視集団有限公司、錦江国際(集団)有限公司、百聯集団有限公司の4社。ともに上海市政府系の企業で、傘下に多数の上場企業を抱えている。上海市場では上海陸家嘴金融貿易区(
900932/
600663)、上海錦江国際実業投資(
900914/
600650)、上海錦江国際旅游(
900929)、上海錦江国際酒店発展(
900934/
600754)、上海東方明珠新媒体(
600637)、香港市場では上海錦江国際酒店集団(
02006)などだ。上場各社は親会社を通じて上海ディズニーランドとつながりを持つだけでなく、観光や不動産、メディア、小売りなどそれぞれの本業でも関係が深い。
◆万達集団の王会長が「宣戦布告」、テーマパーク産業の活性化につながるか
実は、現時点で上海ディズニーランドとの関連で最もメディアで取り上げられる企業は、上海ディズニーテーマ株ではない。上海ディズニーランドに対抗して中国本土でテーマパーク事業に乗り出した大連万達集団だ。同社を率いる王健林会長は、国営テレビ局「中国中央電視台(CCTV)」のインタビュー番組で、「ディズニーは内地に来ない方がいい。虎といえどもオオカミの群れにかなわない」と言い放った。宣伝効果を狙った意図的な挑発との見方もあるが、ディズニーへの宣戦布告と受け止められた。
王会長が言う「虎」はディズニーランド、「オオカミの群れ」は大連万達集団の複合観光施設「万達城(ワンダシティー)」のこと。最初の「オオカミ」となる「万達文化旅遊城」は5月28日、江西省南昌市で開業した。総面積200ヘクタールのうち屋外テーマパークが80ヘクタールを占め、大型ジェットコースターなどのアトラクションを備える。万達集団は2020年までにワンダシティーを15−20カ所で開業する方針。王会長は「わが社(万達)は、この先20−30年はディズニーが中国で利益が出せないようする」と語った。もっとも、ウォルト・ディズニーのアイガー最高経営責任者(CEO)は米CNNのインタビューで、王会長の発言について「おもしろいが、王健林氏が何を言ってもわれわれには全く影響しない」とかわしている。
市場では、大連万達集団がディズニーと競い合うことで中国のテーマパーク産業がより活性化するとの期待も広がっている。中国の家庭にテーマパーク観光を楽しむ習慣が根付けば、世界最大の水族館を持つ「珠海長隆海洋王国」(広東省珠海市)や、宋朝文化テーマパーク「杭州宋城」(浙江省杭州市)など中国独自の施設の来場者もむしろ増えるとの見方だ。